夏目漱石や和辻哲郎が絶賛した、中勘助。
一回目に読んだときは、何がよいのかわからなかった。
ストーリーは、特にない。この小説の何がよいのかが、理解できなかった。
でも、落ち着いて考えるとすごく特異な小説であることがわかる。
回想といえばそうなのだが、子供の気持ちを子供の視点で描けている。
大人が子供の気持ちを考えたのではなく、子供の頃の気持ち自体を描けている。
そしてその子供の気持ちが、だんだんと成長していく。
だからストーリーとしては、ただの子供の成長物語に過ぎないのだが、
描写であったり、主人公の気持ちを描く部分が特異であるといえる。
でもまあ今の僕にはこの話を受け取るだけの器量がない。
多分だけど、今の自分はまだ子供であり、子供時代を過去といえないでいる。
そのことがこの作品に新鮮みを感じさせないのだろう。
子供時代が過去になったときに、この作品の良さがわかるんだと思う。
何でこの人は、子供のときの気持ちをこんなに繊細に描けるのだろうと。
この本が理解できたときに、大人になれたといえるのかもしれない。