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too badこの人は本当に、何色持っているんだろう。 全ての作品で色が違う上に、その全てが面白い。 こんなオールラウンドプレイヤーが存在していいのだろうか。 彼の文才には嫉妬すら覚えることもなく、ただただ尊敬である。 川崎を舞台に繰り広げられる、三人の最悪なストーリー。 一人はやくざとのいざこざのすえやくざに追われ、一人は近所との軋轢や取引先の無理な注文に頭を抱え、もう一人は家族や職場でのセクハラに頭を抱えていた。彼らはそれぞれ自分が最悪だと思い、事実最悪であった。 その彼らの人生が、ある一点で交差する。 その場所は、一つの銀行であった。 これ以上のことは書かないが、交差した後の展開が面白い。 それまでの話も一つ一つの短編のように読めるが、真骨頂は後半。 どたばた喜劇のようにも見えるが、人間の心の闇も垣間見える。 面白さの中にある徹底した人間の心理描写が秀逸である。 奥田英朗を読んだことがない人には、とりあえずこれを勧めようかと思う。 初期の伊坂作品とかぶる部分があるので、伊坂作品好きにもオススメ。 話は少し変わる。 昔は読み飛ばしていた作品の解説だが、最近はきちんと読むようになった。 過去には何故作者の生い立ちから書くのかが理解できていなかったが、今になると作者の生い立ちを書かない解説が理解できなかったりする。作品を知るには、著者がどのように生きてきたのか、考えてきたのかを知る必要があるからだ。どれだけ自分を偽って書いたとしても、書いた文章にはその人そのものが出てくる。それを多分、過去の読書家は皆知っているから、解説を書くときには生い立ちを書いたのだろう。(著者と自分の関係を書くことで、その人の人柄を暗に示す人もいるけど。) 解説にも型があるんだなと、最近になって思う。 そして型の大切さも同時に。 「型のある人が型を破ることを型破りといい、型のない人が型を破ることを型無しという」 昔の人は、うまいこと言ったものである。
by pyababy
| 2009-02-11 00:38
| 本
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