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日々垂れ流し。
by pyababy


秋の再読週間1

人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))

太宰 治 / 新潮社



「図書館の神様」や「後悔と自責の哲学」を読んでいたら、
今まで読んできた本を急に読み返したくなった。

僕は基本的に本を読み返すことはしない。
過去に読んだ物を読むより、新しい物を読みたいという欲求が強かったからだ。

しかし、そろそろ、読み返しても良いのではないかと思うようになってきていた。
多分それは自分としてはある程度納得できる量をこなすことができたこと、
そして、「今だからわかる何か」を求めて再読したくなったということに起因する。

そこで、今まで自分が読んだ本の中で影響を受けた物を読み返してみることにした。
家にある物に絞ったため、数としては2-30冊程度だろうか。

何を読もうかと本の背表紙を見ながら選んでいるときに、
その本を読んだときの僕の心の背景や、
その当時流行っていたものなんかがよみがえってきた。

人によっては思い出を残す物は写真だったり音楽だったりするのかも知れないが、
僕にとっての思い出を残す物は、多分本だったのだろう。

一冊目に選んだのは、太宰の「人間失格」であった。
深い理由はないが、初めて読んだ時に受けた衝撃が忘れられなかったこと、
そして、今年の僕のテーマである「後悔」にふさわしい内容だったから選んだのだろう。
直感で選んだこともあり、そこには僕が考えつくような理由は存在していないのだが。

「人間失格」の話を思い出すときに出てくるのは、とある大学での授業の風景である。
僕が受けた講義の中でも群を抜いて面白かった彼の講義で、
「人間失格」を扱うときがあった。

彼は「三枚の写真」のことを克明に語り出した。
一枚目は、子供のころの写真。
二枚目は、美青年の写真。
三枚目は、特徴のない写真。

何故小説の冒頭をここまで鮮明に覚えているのだろうと、
その講義を聴きながら不思議に思った記憶がある。

しかし改めて読み返してみたときに思うことは、
「はしがき」が持つ重さと、「あとがき」が持つ開放感であった。

太宰はまさに、人間を描いていた。
だからこそ、僕らから程遠いはずの狂人の話が、身近に感じられるのではないだろうか。
by pyababy | 2009-09-21 00:07 |
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