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まなざしの地獄。永山則夫といえば、永山基準という言葉で知られるように、 法律を学ぶ人間ならば誰もが耳にしたことのある人間である。 彼は法律学だけでなく、社会学においても重要な意味を持つ人物である。 本書「まなざしの地獄」は大社会学者である見田宗介が、 永山則夫が起こした事件の裏側にある社会について、 社会学的観点から分析した本である。 この論文を知ったきっかけは、大学一回生の時の一般教養の講義であった。 当時から読もうと思ってはいたものの、 この論文単体が載っている本は存在していなかったこともあり、 3年越しに読むこととなってしまった。 本書はNN(永山則夫)が起こした事件を軸に、 当時の日本社会の階級構造の全体を浮き彫りにすることを目的に書かれている。 それゆえに単なるNN論ではなく、社会全体に目を向けて書かれている。 なんというか僕がこうやって感想を述べたり、解釈を述べたりするのが、 本当に馬鹿らしく思えてくるほどしっかりした論文であった。 いつからか身につけてしまった批判的読書の方法で読んでいたものの、 どこにも反論することなど見つからず、ただただ納得の一途であった。 ああこれが偉大な論文なんだろうなと思うしかなかった。 天才ってこんな人のことをいうんだなーと。 何よりすごいと思ったことは、著者のデータ分析についてである。 普段なら何となく見逃してしまうような統計データから、 当時の社会の状況、そしてNNの過去についてまで、 徹底的に分析されていた。 同じデータを扱っているはずなのに、扱う人間が違うだけで、 これほど解釈と説得力に違いが生ずるのかと思うと驚きを隠せなかった。 現在の自分の位置をまざまざと思い知らされたという点でも衝撃であった。 内容もすごく面白い。 骨子となっている部分を引用。 「人の現在と未来とを呪縛するのは、この過去を本人の「現在」として、また本人の「未来」として、執拗にその本人にさしむける他社のまなざしであり、他者たちの実践である。」 例を挙げるならば (自分でつくろうと思ったけどどう見ても引用した方が良い例があるから引用) 「顔面にキズのある人間は罪悪の人かもしれないという他者たちのまなざしとその実践が、彼(NN)をまことに罪悪の人として予定してしまう。」といった具合である。 要するに、その人自体ではなく、その人が持つ「何か」によって、 他者から評価されてしまうということを述べている。 そしてNNにとっては「この他者のまなざしこそ地獄であった。」のだ。 むううううううううううううううううううううううう。 纏めようと思っても、本文が良すぎてこれ以上纏められないしにたい。。 いつかこんな風に頭を使えるように、 そしてこんな風に人を納得させることのできる文章が書ける人間になりたい。。
by pyababy
| 2009-09-26 02:26
| 本
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