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侏儒の言葉・西方の人伊坂幸太郎の『チルドレン』の中で、主人公が一人の非行少年に勧める本がある。 それがこの、芥川龍之介の『侏儒の言葉』である。 それゆえに前々から気になってはいたものの読んでいなかったので手に取ってみた。 感想としては、芥川は本当に天才だったんだなということがあげられる。 本書は箴言集みたいな感じで、芥川が自分なりに解釈した言葉の意味や定義が述べられている。言葉の定義を行うということは想像以上に難しく、簡単にできることではない。芥川がいとも簡単にそれを成し遂げたのは、彼には世の中の事象を的確に見抜くことのできる眼と、頭で思い浮かべたことを全てそのまま言葉によって表現することのできる天才的な文章力があったからである。凡人の僕にはその両方が存在せず、ただただ彼の才能と能力に感心するばかりであった。 いくつか好きなものを引用する。 「天才とは僅かに我我と一歩を隔てたもののことである。只この一歩を理解する為には百里の半ばを九十九里とする超数学を知らなければならぬ。」 「わたしは不幸にも知っている。時には嘘に依る外は語られぬ真実もあることを。」 「恋愛は唯性慾の詩的表現を受けたものである。少なくとも詩的表現を受けない性慾は恋愛と呼ぶに価しない。」 「或仕合せ者 彼は誰よりも単純だった。」 普通の箴言集や格言集と違うところが、随所にアイロニーが鏤められているところだろうか。芥川ならではの厭世的な世の中の見方が、彼独特の言葉と世界を紡ぎ出し、それが僕らが普段味わうことのない禁断の果実のように思えて、読後には満足感と背徳感があった。
by pyababy
| 2009-12-03 11:50
| 本
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