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日々垂れ流し。
by pyababy


優しい音楽

優しい音楽 (双葉文庫 せ 8-1)

瀬尾 まいこ / 双葉社



瀬尾まいこの話は、文章を読んだだけで彼女の作品だと分かる。
それはつまり、彼女には他の人には出すことのできない味があるということで、その意味において彼女は過去に存在した偉大な作家と肩を並べる作家なのだと思う。

この短編集も、瀬尾まいこらしい作品であった。
サラッと読めるんだけど、そこには暖かみが含まれていて、読後にはほっこりした気持ちになれる。それなのに、どこかに見えないトゲがあり、僕らの心をチクチク刺していく。

その理由は、彼女の紡ぐ世界が、僕らの日常とは倫理観が少し違うからなのだと思う。
僕らの生きる世界では許されなかったとしても、彼女の紡ぐ世界の論理においては許される行為に変わるのである。だけれども、本来的には彼女の世界が正しいものなのだと僕は感じている。だからこそ、現実とのギャップに、心が少し痛むのだと思う。

本書はそんな意味での瀬尾ワールド全開である。
ただ少し難点を述べるとすれば、先が読める小説だということだろうか。
そこだけが残念である。
by pyababy | 2009-12-03 13:30 |
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